母さんはしばらくの間45口径を持ち歩いた
ヒップの片方にぼくを
もう片方にピストルをぶら下げて
そこは女ばかりの居住地だった
パイロットの妻たちが
かまぼこ型兵舎に住んでいた
いつも雨が降っていた
妻たちはピリピリしていた
夫たちがいないからだ
日本兵がジャングルから忍び出て来て
物干から濡れた洗濯物を盗んで行った
女たちはほんの少しの物音にも発砲した
ときには互いの影に向かって
母さんとぼくも一度撃たれそうになった
母さんの一番の親友にだ
弾丸はブリキの壁を貫通して
大きなギザギザの穴を残した
後にぼくは貯水池のそばで
日本兵の頭骸を見つけた
こめかみの所を
弾丸が貫通した穴から
蟻たちが這い出して来た
(サム・シェパード「モーテル・クロニクルズ」畑中佳樹訳)
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